もともとアメリカ航空宇宙局(NASA)およびアメリカ合衆国国土安全保障省(DHS)の内部で運用されていた惑星衝突シミュレーションプログラム「Impact: Earth!」が、イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)とアメリカのパデュー大学(Purdue University)の研究チームによって、一般公開バージョンとして新たに開発された。これにより、関心のあるユーザーが自由に小惑星を地球に衝突させるシミュレーションを「指揮」できるようになった。
惑星衝突シミュレータ「Impact: Earth!」は、Gareth S. COLLINS、H. Jay MELOSH、Robert A. MARCUS の3名の研究者が2005年に発表した研究論文「Earth Impact Effects Program: A Web-based computer program for calculating the regional environmental consequences of a meteoroid impact on Earth」において、地球が地球外天体の衝突を受けた際に引き起こされる各種の影響を解析した研究成果に基づいている。本システムはウェブアプリケーション上で分析と計算を提供し、世界中のユーザーが地域ごとの環境への影響を迅速に評価し、その後の行動(あるいは人生の最後にしたいこと?)を検討できるように設計されている。
現在、このプログラムはパデュー大学の専用ページ「Impact: Earth!」で一般に公開されている。トップ画面は以下の図1の通りだ。
操作インターフェースには、小惑星の直径(Diameter)、密度(Density)、衝突角度(Angle)、衝突速度(Velocity)、衝突地点の地質特性(Target Type)、衝突地点からの距離(Distance from Impact)など、ユーザー自身が入力できる多彩なパラメータが用意されている。
各パラメータを順に入力した後、「Calculate Impact」ボタンをクリックすると、小惑星衝突の結果の計算が開始される。
図1:Impact: Earth! 公式トップ画面。
迫力ある小惑星衝突のアニメーションを鑑賞すると、図2に示すような解析レポートが表示される。このレポートは、シミュレーションされた衝突が地球に及ぼしうる影響を多角的に分析するものだ。
この科学プロジェクトの研究評価項目には、大気圏突入(Atmospheric Entry)、エネルギー予測(Energy)、全地球的損害報告(Global Damages)、クレーター形成(Crater)、放出物(Ejecta)、熱放射エネルギー(Thermal Radiation)、地震災害の影響(Seismic Effects)、爆風・衝撃波(Airblast)、そして津波(Tsunami)の9大項目が含まれている。どの方法で地球が滅亡するか、好みに応じてじっくり観察できる(汗)。
図2:9大項目の分析画面。
詳細レポート画面では、衝突後の詳細な分析データが提供される。ユーザーは9つの大項目のいずれかをクリックすることで、該当項目の詳細レポートを展開できる(項目の下に緑色のランプが点灯している場合は、詳細レポートが提供されていることを意味する)。
適当に数値をいじるだけでは物足りないという方のために、本プログラムは地球上の著名な5大小惑星衝突イベント(Famous Craters)のパラメータをあらかじめプリセットとして用意している。地球の歴史上実際に起きた衝突の記録を観察し、それらの衝突が現代の生活や科学の進化にどのような影響をもたらしたのかを深く思い馳せることができる。
図1:Impact: Earth! 公式トップ画面。
地球の歴史上最も有名な5大衝突イベントには、アメリカのバリンジャー・クレーター(Meteor Crater、直径40m)、1908年にシベリアで発生したツングースカ大爆発(Tunguska Fireball、60m)、ドイツのネルトリンガー・リース(Ries Crater、1,500m)、アメリカのチェサピーク湾(Chesapeake Bay、2,300m)、そして現在知られている中で地球最大規模の衝突とされるメキシコのチクシュルーブ・クレーター(Chicxulub、17,500m)が含まれている。
その中でもツングースカ大爆発は、極めて人里離れた辺境で発生したこと、そして当時は戦乱の時代(第一次世界大戦直前)であったことから、現地調査に赴いた研究者はごく少数にとどまった。さらに長い年月の経過と戦乱による荒廃が重なり、現存する学術資料は極めて乏しい。そのため爆発の原因についてはいまだ確定的な証拠による結論が出ておらず、「世界三大自然の謎」の一つにも数えられている(他の2つは中国の王恭廠大爆発とインドのモヘンジョダロ/死の丘事件である)。
また、トップページ上部には簡単な用語集(Glossary)も用意されている。どれくらい簡単かというと、「Complex Crater」「Ejecta」「Final Crater」「Simple Crater」「Transient Crater」という5つの天文学用語が掲載されているだけだ。興味のある方はぜひ公式サイトにアクセスして試してみてほしい。
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