英国のエネルギー安全保障・ネットゼロ担当大臣グラント・シャップス(Grant Shapps)氏は、宇宙太陽光発電(Space-Based Solar Power, SBSP)の実用化に向けた研究プロジェクトに430万ポンド(約7億7000万円)の政府資金を投入すると発表しました。このプロジェクトは、軌道上に浮かぶ巨大な太陽光発電衛星から地上へマイクロ波などを用いてワイヤレスで電力を送り、将来的に英国全体の電力需要の最大25%を供給することを目指す野心的な取り組みです。
本プロジェクトには、英国内の有力な研究機関や産業界が参画しています:
- ケンブリッジ大学:宇宙の過酷な放射線環境に耐えうる超軽量太陽光発電パネルの開発を担当。
- ロンドン大学クイーン・メアリー校:宇宙で発電した電力を地上へ損失なく届ける高効率な無線送電技術の研究を主導。
- EDFエナジー(EDF Energy):宇宙から受信した電力を英国の送電網(ナショナル・グリッド)へ安全かつ効率的に統合する手法を検証。
想定されるシステムでは、宇宙空間に展開された長大な太陽光パネルアレイで日光を集光し、生成された電力を高周波マイクロ波に変換して地球上の受電アンテナ(「レクテナ」)へビーム照射します。地上で受電したマイクロ波は直流電力へ再変換され、家庭や産業へと送られます。シャップス大臣は「宇宙空間では大気や昼夜の移り変わりに影響されず、24時間365日いつでも強烈な太陽光を取り込めるという絶対的な優位性がある」と述べ、この先端技術への先行投資は十分なリターンをもたらすと強調しました。
宇宙太陽光発電の開発は英国にとどまらず、世界中で競争が激化しています:
- 中国は2028年までに最初の宇宙太陽光発電実証プラントを打ち上げる計画を策定。
- **欧州宇宙機関(ESA)**は「Solaris」計画を通じて基礎技術の研究開発を加速させています。特に天然ガス供給パイプライン「ノルドストリーム1」の依存から脱却を図るドイツが強い関心を示しています。
- 米国ではカリフォルニア工科大学(Caltech)の研究チームが、実証衛星「SSPD-1」からのワイヤレス送電実験において、宇宙空間から地上への送電検出に世界で初めて成功したと発表しました。
宇宙空間に設置されたソーラーパネルは、大気による散乱や反射を受けないため、地上の太陽光パネルの最大40倍ものエネルギーを安定して生み出すことができます。さらに夜間が存在しないため、再生可能エネルギーの弱点であった間欠性を克服するベースロード電源になり得ます。英エンジニアリングコンサルタントのフレーザー・ナッシュ(Frazer-Nash)社がまとめた報告書によると、2040年までに商業用宇宙太陽光発電所が少なくとも1基稼働すれば、年間800TWhのクリーン電力を供給し、210億ポンドの経済効果と約14万3,000人分の雇用を創出すると試算されています。
英国政府はこのプロジェクトの実現に向けて国際協力も重視しており、すでにフランス、米国、サウジアラビアなどの諸国と共同開発に向けた協議を進めています。
宇宙太陽光発電は、持続可能な脱炭素社会の実現に向けた抜本的なゲームチェンジャーとなり得ます。各国と民間企業の技術革新によって、SFの世界と考えられていた宇宙クリーンエネルギーが、いよいよ現実のインフラとして形を現し始めています。
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