台湾の衛生福利部(保健福祉省に相当)は、改正された全民健康保険法施行細則に基づき、12月23日をもって従来の「保険一時停止・再開(停復保)制度」を正式に廃止する方針を予告しました。

これにより、中華民国(台湾)の戸籍を有する国民は、台澎金馬(台湾本島および澎湖・金門・馬祖)の国内に居住しているか否かを問わず、原則として全民健康保険(日本の国民健康保険に相当)の保険料を継続して納付することが義務付けられます。すでに停止手続きを完了している者は暫定的に停止状態が維持されますが、帰国当日に保険を再開した後は、二度と停止手続きを行うことは認められなくなります。

健保「停復保制度」をめぐる背景とこれまでの実情

長期のバックパッカー旅行、海外留学、ワーキングホリデー(Working Holiday Visa)などを好む旅行者にとって、従来の制度では「半年以上海外に滞在する場合」に健康保険の支払いを一時停止(停保)し、利用しない期間の余計な出費を抑えることが一般的でした。

しかし旅行者のコミュニティでは、この仕組みを意図的に利用するテクニックが広く出回る事態となっていました。例えば、保険を停止したまま出国し、海外で病気や怪我をして現地の医療費が高額になった場合、帰国直後に保険を再開して現地の診療領収書を提出し、後から健保給付の還付を申請するといった事例です。こうした手法は、相互扶助を基本とする国民皆保険の理念(Universal Health Coverage)を損なうものとして、長年にわたり強い社会的批判を浴びてきました。

新制度が海外渡航・滞在計画に及ぼす影響

1. 保険料の継続納付義務

中華民国行政院衛生福利部の新規定により、台湾の戸籍を有する者は、たとえ長期間海外に滞在していても健康保険料を納め続けなければなりません。今後は「海外にいるから」という理由で保険料の納付を一時的にストップすることは一切できなくなります。

2. 停止と再開の手続き廃止

現行ルールでは、6ヶ月以上の出国で一時停止を申請でき、帰国して再開した後は3ヶ月経過すれば再度の停止申請が可能でした。しかし今回の法改正により、このサイクルそのものが完全に廃止されます。

憲法法廷の判決と法改正の法的根拠

民国111年(2022年)12月23日、台湾の憲法法廷は「現行の健保停復保制度は法律による明確な委任を欠いており、違憲である」との判決を下しました。これに伴い、衛生福利部には2年以内に法改正を完了させて制度の適法性を整理することが求められていました。

改正条文の具体的な要点

衛生福利部社会保険司の劉玉娟司長によれば、今回の改正の主眼は、停復保の申請規定およびこれに付随する扶養家族の適用規定を完全に削除することにあります。また、現在すでに停止状態にある国民に対しては、権利関係の急変を避けるための経過措置(過渡条項)が設けられています。

主な経過措置(過渡条項):

  • 12月22日までにすでに停止手続きを完了している者は、帰国当日に従前の規定に従って保険を再開しなければならず、以降は再度の停止は不可。
  • 政府の在外公館勤務職員およびその同伴配偶者・子女についても、帰国当日に保険再開手続きを行い、以後の再停止は認められない。

今後の影響と海外渡航者への提言

この大きな制度転換は、長期間海外で生活するバックパッカー、留学生、ワーキングホリデー渡航者のこれまでの常識を覆すものです。過去の情報や口コミをそのまま信じていると、思わぬ未納トラブルや資金ショートに直面しかねません。海外への長期渡航を計画している方は、毎月の健康保険料支出を織り込んだ資金計画を事前に立て、将来の無用なトラブルを防ぐことが強く推奨されます。

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