最近、自社Webサーバーのアクセスログに、OpenAIのChatGPTクローラー「GPTBot」を名乗る不審なトラフィックが急増していることにお気づきでしょうか?

先日、当サイト(Mountos)のサーバー通信を監視していたところ、20.171.207.116 というIPアドレスから異常な頻度のリクエストを検知しました。User-AgentにはGPTBotと記載されていましたが、その振る舞いは通常の検索インデックス作成とはかけ離れ、まるで脆弱性を総当たりで探るスキャナーのような挙動でした。

詳しく調査を進めた結果、このIPアドレスは確かにOpenAIが公式に公表しているCIDRブロック内に含まれていました。しかし、公式IPであっても度を超えたリクエストや、偽装の疑いがあるボットの存在は、Webマスターにとって深刻なセキュリティ上の脅威です。

本記事では、OpenAIが公開している公式IPアドレス帯の全リストを整理し、本物のGPTBotの識別方法と、偽装アクセスを防御するための実践的な対策を解説します。


1. 検出された不審IPの挙動:本物か偽物か?

今回のサーバー定期監視で補足されたIPアドレスは 20.171.207.116 であり、リクエストヘッダーのUser-Agentは以下の通りでした:

Mozilla/5.0 AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko; compatible; GPTBot/1.2; +https://openai.com/gptbot)

WHOIS情報および逆引きDNS照会を行うと、MicrosoftのIP空間(AS8075 MICROSOFT-CORP-MSN-AS-BLOCK)に属しており、後述するOpenAI公式の 20.171.207.0/24 に完全一致していました。

しかし問題はその「リクエスト頻度」でした。1日に10万回以上もルートディレクトリや内部パスへ高頻度アクセスを浴びせかけており、サーバー負荷の観点から到底「健全なクローラー」と見なすことはできませんでした。そのため、当サイトでは直ちにファイアウォールで遮断(Block)措置を実施しました。


2. OpenAI公式IPアドレス一覧(最新CIDRブロック)

正当なクローラー通信を判定できるよう、OpenAIは公式のIPアドレス範囲をJSON形式で公開しています:

GPTBot 公開IP範囲(データ収集・インデックス用)

{
  "creationTime": "2023-11-30T11:51:00.000000",
  "prefixes": [
    {"ipv4Prefix": "52.230.152.0/24"},
    {"ipv4Prefix": "52.233.106.0/24"},
    {"ipv4Prefix": "20.171.206.0/24"},
    {"ipv4Prefix": "20.171.207.0/24"},
    {"ipv4Prefix": "4.227.36.0/25"},
    {"ipv4Prefix": "20.125.66.80/28"},
    {"ipv4Prefix": "172.182.193.160/28"}
  ]
}

ChatGPT-User 公開IP範囲(ユーザー指示によるリアルタイム閲覧用)

{
  "creationTime": "2025-02-20T20:15:50.707457",
  "prefixes": [
    {"ipv4Prefix": "23.98.179.16/28"},
    {"ipv4Prefix": "172.183.222.128/28"},
    {"ipv4Prefix": "51.8.155.64/28"},
    {"ipv4Prefix": "51.8.155.48/28"},
    {"ipv4Prefix": "135.237.131.208/28"},
    {"ipv4Prefix": "51.8.155.112/28"},
    {"ipv4Prefix": "52.159.249.96/28"},
    {"ipv4Prefix": "172.178.141.112/28"},
    {"ipv4Prefix": "172.178.140.144/28"},
    {"ipv4Prefix": "172.178.141.128/28"},
    {"ipv4Prefix": "4.196.118.112/28"},
    {"ipv4Prefix": "20.215.188.192/28"},
    {"ipv4Prefix": "4.197.22.112/28"},
    {"ipv4Prefix": "57.154.175.0/28"},
    {"ipv4Prefix": "52.236.94.144/28"},
    {"ipv4Prefix": "23.98.186.192/28"},
    {"ipv4Prefix": "23.98.186.176/28"},
    {"ipv4Prefix": "13.83.167.128/28"},
    {"ipv4Prefix": "20.97.189.96/28"},
    {"ipv4Prefix": "20.161.75.208/28"},
    {"ipv4Prefix": "52.225.75.208/28"},
    {"ipv4Prefix": "52.156.77.144/28"},
    {"ipv4Prefix": "40.84.221.208/28"},
    {"ipv4Prefix": "40.84.221.224/28"}
  ]
}

OAI-SearchBot 公開IP範囲(検索機能用)

{
  "creationTime": "2025-02-10T21:00:00.000000",
  "prefixes": [
    {"ipv4Prefix": "20.42.10.176/28"},
    {"ipv4Prefix": "172.203.190.128/28"},
    {"ipv4Prefix": "51.8.102.0/24"},
    {"ipv4Prefix": "135.234.64.0/24"}
  ]
}

User-AgentがGPTBotでありながら、送信元IPがこれらの公式サブネットに含まれていない通信は、100%偽装された不正アクセスと判断して差し支えありません。


3. 正規GPTBotを見分ける3つのチェック項目

  1. User-Agentヘッダーの正確性:GPTBot/1.x および公式URL(https://openai.com/gptbot)が正しく含まれているか。
  2. 送信元IPのCIDR照合:OpenAIが公開するIPリストと一致するか。
  3. クロール規約(robots.txt)の遵守:正規のボットであれば、robots.txtに明記されたクロール禁止設定を遵守します。

4. 攻撃者がAIボットを偽装する目的

なぜ攻撃者はわざわざGPTBotのふりをしてアクセスしてくるのでしょうか?

  • WAFのバイパス:初期設定のファイアウォールでは「有名クローラー」のUser-Agentを素通りさせてしまうケースが多く、それを悪用して侵入を試みます。
  • 機密ファイル・脆弱性の探索:管理者画面や設定ファイル(.envやバックアップファイル等)の存在をAIボットの仮面を被って密かにスキャンします。
  • 無断スクレイピング:サイトの利用規約やアクセス制限をすり抜けて、無断でコンテンツを収集します。

5. Webマスターのための実践的防御策

1. Cloudflare等のWAFで偽装ボットを遮断

「User-AgentがGPTBotを含み、かつ送信元IPがOpenAI公式リストに含まれない」通信を自動検知してブロックするカスタムルールを作成します:

  • 条件例:(http.user_agent contains "GPTBot") and not (ip.src in $openai_ip_list)
  • アクション:Block(遮断)

2. robots.txt でのクロール拒否設定

OpenAIによるサイトコンテンツの学習やクロール自体を拒否したい場合は、以下のディレクティブを追記します:

User-agent: GPTBot
Disallow: /

3. レートリミット(接続頻度制限)の導入

正規IPからのアクセスであっても、同一IPからの短時間の過剰リクエスト(例:1分間に60回超)は自動的に一時遮断するレート制限を設けます。

4. 定期的なアクセスログ監査

NginxやApacheのログを定期解析し、異常な404エラーや高頻度リクエストを発信している不審IPを早期に特定・ブラックリスト化します。


まとめ

生成AIの台頭に伴い、AIクローラーを偽装したサイバー攻撃の手口は一段と巧妙化しています。公開されている公式IPリストを活用し、多層的なセキュリティ設定を講じることで、自サイトの貴重なデジタル資産をしっかりと防衛していきましょう。

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