AppleのmacOSおよびiPadOS向けベクタードローソフトとして多くのクリエイターに支持されてきた「Curve」(旧名 Vectornator、現ブランド名 Linearity)。
昨年末、同アプリがユーザーの作成データを強制的に自社のクラウドサーバーへアップロードさせ、さらにオフライン状態ではローカルファイルの自由な作成・編集やアクセスを厳しく制限する仕様変更を突如導入したことで、国内外のコミュニティから怒りの声が噴出しています。
海外の大手コミュニティサイトRedditでは、有志ユーザーによる投稿が大きな波紋を呼びました。かつて「Vectornator」と呼ばれていた初期の頃、オープンで共有の精神に賛同した世界中の何百人もの開発者や熱心なボランティアが、無償でバグ報告や多言語ローカライズの改善を手伝ってきました。多言語対応の完成度が高かったのも、こうした有志の草の根的な協力があったからこそです。
Curve による突然のサブスク有料化と過去の切り捨て
ところがある日、運営会社は名称を「Curve」へと変更し、過去の開発経緯やコミュニティへの敬意を払うことなく、かつて支援してくれたユーザー層を切り捨てるような経営方針へと舵を切りました。
昨年半ば頃から有料化サービスの計画自体は知られていましたが、当初は新しくリリースされるモーショングラフィックス・アニメーションアプリ「Move」を対象にしたものと思われていました。
しかし実際に蓋を開けてみると、長年無料のスタンドアロンツールとして親しまれてきたベクター描画アプリ「Curve」まで巻き込まれ、2つのソフトが抱き合わせのような形で「Linearity Pro」という高額なサブスクリプションとして一本化されてしまったのです。
アニメーション機能など求めておらず、iPadやMacで手軽にベクターの作図やアイコン制作を行いたいだけのライトユーザーにとって、全く必要のない新アプリのコストまで押し付けられる形となり、多くのユーザーが強い不満を抱くことになりました。
ユーザーの信頼を損なう「オフライン制限と保存数制限」
最も批判を浴びたのは、無料版の保存ファイル数をわずか「3つまで」に厳しく制限した点です。
さらに呆れたことに、端末がインターネットに接続されていないオフライン状態では、ローカルに保存されている自分の作品を開いたり削除したりすることすらブロックされ、エラー警告が表示される始末でした。正常にファイルを扱うためには、作品を運営側のクラウドサーバーに預けざるを得ない仕組みに変貌してしまったのです。
作品の所有権やセキュリティを軽視したこの強硬な仕様変更に対し、海外のユーザーコミュニティでは「ランサムウェアまがいの囲い込みだ」と激しい批判が巻き起こりました。
Linearity Pro の価格設定とプロ市場の現実
「Linearity Pro」のサブスクリプション料金は、月額約390台湾元(年額2,990台湾元、日本円で月額1,500円〜年額12,000円前後)に設定されています。極端に高額ではないものの、一般ユーザーが気軽に払い続けられる価格とは言えません。
業界標準である「Adobe Illustrator」は単体プランで月額料金がより高価ですが、プロの現場で働くデザイナーであれば、圧倒的な安定性、業界標準のファイル互換性、充実したサードパーティプラグインを備えたIllustratorを迷わず選びます。
今回の騒動は、「ライト層に対して、抱き合わせのサブスクリプションを強引に売りつけようとした」点に根本的な戦略の歪みがあります。利用頻度の低いユーザーに高額サブスクを強要しても、解約と乗り換えを招くだけです。
もし自動アップデートをまだ適用していない方は、App Storeの自動更新を今すぐオフにし、旧バージョンを維持して利用することを強く推奨します。
サブスクに課金したくない場合の現実的な対策
すでにアプリが更新されてしまい、サブスク契約をするつもりのないユーザーには、以下の2つの自衛策をおすすめします。
- 既存データのSVG書き出しとローカル退避:
制作済みのすべてのデザインデータを「SVG形式」でローカルストレージや外部ドライブに一括書き出ししてバックアップしてください。クラウド上のデータは3つ以内に整理し、以後は必要な時だけSVGを読み込んで編集します。 - 代替となるデザインツールへの移行:
- Affinity Designer 2:iPadおよびMac向けに提供されている本格的ベクターソフト。サブスクではなく**買い切り型(永久ライセンス)**であり、プロユースにも十分耐えうる機能を備えています。
- Adobe Illustrator:本格的な商業デザインを行うのであれば、業界標準の信頼性を得られる最良の選択肢です。
- CorelDRAW:Windows環境や特定業界で根強い人気を持つプロ向けベクターツール。
- Vectorizer.io などのWebツール:写真やビットマップ画像からベクターパスを自動トレースしたいだけであれば、高機能なブラウザベースの変換サービスを活用するのも有効な手です。
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